弁護士吉田孝夫の憲法の話(85)法定手続の保障

憲法31条は、「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。」と定め、これは、一般的に「法定手続(ほうていてつづき)の保障」と呼ばれます。しかし、「適正手続の保障」と呼ぶ学者もいます。憲法の条文には「適正」という文字はありませんが、この条文は、刑事手続を法律で定めるだけでなく、その法律が適正でなければならないという趣旨を含んでいると解釈するのです。このことは、前に、「憲法を解釈するということ」の表題で書きました。
成文法の解釈は、文字通りに解釈する「文理解釈」が基本であり、出発点ですが、文理解釈では、条文が何を言いたいのか十分理解できない場合、論理的解釈、目的解釈、歴史的解釈というような手法によって、憲法の条文の趣旨を解明するという作業が必要になります。
明治憲法より人権を手厚く保障する日本国憲法への移行、その過程におけるGHQのマッカーサー草案を通じてのアメリカ合衆国憲法の決定的影響という歴史的経緯に基づき、大多数の憲法学者は憲法31条を、アメリカの「デュー・プロセス・オブ・ロー」(法の適正手続)の理念を取り入れたものと解釈し、最高裁もその解釈を採用しています。これは憲法学者の功績だと思います。
どのような刑事手続が適正と言えるのかについては、憲法32条から39条まで具体的な規定がありますので、31条は総則的(原理的)に適正手続を保障した規定です。その手続原理というのは、刑事手続により不利益を受ける者に対し、告知・聴聞の機会が保障されるということです。告知・弁解・防御の機会とも言われます。つまり、告知・聴聞の機会を与えずに不利益を課するような手続を定めた法律は憲法違反ですから、その全部又は一部は、憲法98条1項により、無効です。