弁護士吉田孝夫の憲法の話(86)法定手続の保障は行政手続にも及ぶか
最高裁は1992年、成田新法事件につき、「憲法31条の定める法定手続の保障は、直接には刑事手続に関するものであるが、行政手続については、それが刑事手続ではないとの理由のみで、そのすべてが当然に同条による保障の枠外にあると判断することは相当ではない。」と判示しました。歯切れの悪い表現ですが、行政手続であっても、その一部には憲法31条の適正手続の保障が及ぶということです。この点については、憲法31条の保障が及ぶというよりは、憲法13条の、「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の保障を必要とする。」という条文に基づいて保障されるのだという学説もあります。前に書きましたように、憲法が定めている各種の人権は、それに限定されるものではなく、「生命、自由及び幸福追求」の権利を具体的に例示したものと解釈するべきですが、日本の裁判所はあまり積極的ではありません。そのため、日本の立法、司法、行政は、国連の規約人権委員会その他の人権関係の委員会から、たびたび改善の勧告や要請を受けています。
例えば、児童相談所(児相)による子どもの一時保護措置が問題になることがあります。虐待を受けている児童が一時保護によって救済される場合はいいのですが、虐待がないことを主張して、親が子どもを取り戻そうとするのは非常に困難です。憲法34条は、「何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法定で示されなければならない。」と定め、これに基づいて人身保護法が制定されました。ところが最高裁の規則は、同法により人身保護請求をするには、拘束が「その権限なしにされ又は法令の定める方式若しくは手続に著しく違反していることが顕著である場合」でなければならないと定めています。行政の措置が違法であっても、それだけでは請求は認めないぞという強い意思が伝わってくる条文です。
