弁護士吉田孝夫の憲法の話(75) 教育を受ける権利(2)

国際人権規約は、「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(社会権規約、A規約)と市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約、B規約)とに分かれています。
A規約13条1項は教育について次のように定めています。
教育は、人格の完成及び人格の尊厳についての意識の十分な発達を指向し、人権及び基本的自由の尊重を強化すべきである。
教育は、何人も自由な社会に効果的に参加でき、諸国民の間及び人種的、種族的又は宗教的集団の間の理解、寛容及び友好の促進、平和維持のための国連の活動を助長できるようにすべきである。
又、2項以下では、次のようなことを定めています。
初等教育の義務、無償
中等教育(技術的及び職業的教育を含む。)の無償化の推進、機会均等
高等教育についても無償化の推進、能力に応じた機会均等
学校制度の発展、奨学金制度の設立、教育職員の物質的条件の改善
など。
教育の目的は、人間の尊厳、人権尊重、相互理解による平和の実現、維持とされているのですが、現在の世界、日本を見渡すと、世界中で教育は失敗しているようにしか見えません。以前に書きましたように、日本の小・中・高等学校では、「人権」が正しく教えられていません。大学の法学部で初めて人権を理解する可能性が存在するという状況です。高校までの日本史では、明治以降の歴史がきちんと教えられていないとも言われています。私自身の経験でも、明治以降の歴史は、臼井吉見の小説「安曇野」を読んで、いろいろ教えられたという感じでした。
その上、金儲けを最高の目的とする新自由主義の考え方が世界のすみずみに行き渡り、教育にも及んでいます。