弁護士吉田孝夫の憲法の話(84)税法の原則

憲法30条は、国民が、「法律の定めるところにより」納税の義務を負うと定めています。納税義務は3大義務の一つとされていますが、前に書いたように、憲法によって納税義務ができたのではなく、憲法は税の徴収に枠をはめています。「代表なければ課税なし。」の標語のとおり、国会や都道府県・市町村の議会における代表者が制定した法律・条例などによらなければ、税の負担はないということです。実際には、国・地方公共団体により、さまざまな税や手数料など(「税」という名前が付いてなくても実質的に税です。)が徴収されますが、それは、私達が選挙で選んだ議員が国民・住民の代表として、賛成多数で決めたことです。
税には直接税と間接税があります。直接税というのは、所得税や法人税などのように、納税者が直接納める税です。それに対し、間接税というのは、消費税のように、物品の購入者が納める税を購入者が直接納めるのではなく、販売者が受け取って、納めるような税です。所得税などは、累進課税と言って、低所得者より高所得者の税率が高く定められています。累進課税は19世紀後半から各国で採用されるようになったと言われています。累進課税が採用される根拠としては、いろいろな説がありますが、結局のところ、月給10万円の人が1万円の税金を徴収されて9万円で生活するのと、月給100万円の人が10万円の税金を徴収されて90万円で生活するのとでは、月給10万円の人の負担感の方が大きいからだと思われます。消費税は、低所得者でも高所得者でも同じ税率で、低所得者に負担感が大きいので、逆進税と言われます。1970年代以降、格差の拡大は悪いことではないとする新自由主義の政治が世界に広まり、高所得者の税率の引き下げや間接税の拡張が進められてきました。しかし、これは社会国家、福祉国家の憲法には合わないので、憲法改正を主張する人々の憲法案は新自由主義を取り入れています。