弁護士吉田孝夫の憲法の話(78) 教育を受ける権利(5)
憲法26条2項には、「すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。」とあるので、教育を受ける権利の相手は親、保護者だと誤解されるかもしれませんが、すべての国民に教育を受けさせる義務を負っているのは国です。前に、人権は国や権力者に対する権利だということを書きました。教育を受ける権利に対応して、国には教育を受けさせる義務があるわけです。ただ、国が提供する「普通教育」については、親や保護者も、それに協力することが求められています。「普通教育」というのは国際人権規約A規約の「初等教育」と同様に、専門教育、職業教育ではなく、社会生活のために皆が共通して必要と考えられる知識や技術を身につけるための教育です。その意味では、憲法25条の生存権と密接な関係があります。しかし、ただ生存のために必要な知識や技術というだけでなく、国の主権者として、国の進路を定める活動(政治)に参画するための知識や技術をも身につけさせる教育(主権者教育)が、子どもの時から成年に達するまでの学習の積み重ねとして必要だと考えられます。歴史によって広い視野を習得することは日常生活には必要ではないかもしれませんが、憲法を制定した時の国民は、将来の国民が過去の戦争の歴史的原因を学んで平和的な国を形成する主権者になってほしいという願いを込めて、教育を受ける権利を定めたに違いないと思います。
第二次世界大戦前、日本では子ども達に対し、天皇は神様だというような洗脳教育が行われました。戦後でも、森喜朗総理大臣は、「日本の国は、まさに天皇を中心としている神の国であるぞということを国民の皆さんにしっかりと承知していただく」と言いましたが、子ども達には正しい歴史を十分に学んでもらって、戦前へ後戻りさせようとする風潮に対し、免疫を付けてほしいものです。
