児童相談所(児相)と違憲の人身保護法制(1)

1 児童相談所の一時保護

小学校1年生の子どもが児童相談所に連れて行かれて、子どもと会えなくなったお母さんが相談に来られました。何とか子どもに会いたい、そして子どもを連れ戻したいという切実な願いです。

お母さんは、児童相談所から渡された「一時保護決定通知書」を持参されました。それには次のようなことが書いてありました。

一時保護の理由 「保護が必要なため」

何これ?と思うでしょう。これでは何も理由が書いてないのと同じではありませんか。なぜ保護が必要かという肝心なことが全然分かりません。

児童相談所は県の行政機関です。私は、これは人身保護法の領域の事件だと直感しました。

人身保護法の第1条(目的)には、「この法律は、基本的人権を保障する日本国憲法の精神に従い、国民をして、現に、不当に奪われている人身の自由を、司法裁判により、迅速に、且つ容易に回復せしめることを目的とする。」と書かれています。

それで、私は人身保護法に基づいて、児童相談所に保護されている(人身の自由を奪われている)子どもを母に返すよう、宮崎地方裁判所に人身保護請求を行いました。

しかし、その結果、人身保護法制は、とんでもないことになっていることが分かりました。

人身保護法には、確かに、「基本的人権を保障する日本国憲法の精神に従い、国民をして、現に、不当に奪われている人身の自由を、司法裁判により、迅速に、且つ容易に回復せしめることを目的とする。」と書かれています。しかし、この法律により裁判所を動かすのは、ほぼ不可能になっています。

まず、憲法が保障する基本的人権とは何かというところから始めましょう。憲法は、本来、国民をしばる法ではなく、権力者をしばる法です。これは、「憲法の名宛人は本来国民ではなく、権力を行使する公務員である。」というようにも表現されます。

憲法99条には、「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」と書いてあり、国民が入っていないのは、このような意味です。

そして、憲法第98条には、「この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。」と書かれています。

憲法34条は、「何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。」と定めています。人身保護法に「基本的人権を保障する日本国憲法の精神に従い、国民をして、現に、不当に奪われている人身の自由を、司法裁判により、迅速に、且つ容易に回復せしめることを目的とする。」と書かれているのは、この精神に基づいていると考えられます。ただ、憲法34条は刑事手続に限定されるとする立場からは、人身保護法は、憲法18条の、「何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。」という規定に基づいているとも言われます。

憲法31条は適正手続を定めており、同条以下は刑事手続における人身保護等を定めたものと見られますが、これらの規定は行政手続にも類推適用もしくは準用されるというのが通説・判例の立場だと思われます(最高裁昭和47年11月22日川崎民商事件判決、平成4年7月1日成田新法事件大法廷判決)。アメリカでは判例で適正手続(デュープロセス)の保障は、行政手続にも及ぶとされています。ちなみに、アメリカでは法(ロー)というのは判例のことです。議会で制定された法律は、「アクト」と呼ばれます。

児童相談所は一時保護という名目で子どもを施設に入れ、外に出さないようにしていますので、その子どもは行政手続により「拘禁」」されていることになります。そのため、憲法31条によれば、そのような身体拘束には適正手続が必要ですし、憲法34条によれば、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならないはずです。人身保護法は、まさにそのことを定めています。

子どもは未成年ですから、その要求は親権者がすることになります。