弁護士吉田孝夫の憲法の話(10) 憲法前文(1)
1946年11月3日,天皇は日本国憲法を裁可し,公布しました。11月3日は「文化の日」ですが,「憲法発布の日」とも呼ばれ,私が小学生の時,朝礼で校長先生が,憲法の話をされていたのを思い出します。話の内容は思い出せませんが。
それでは,いよいよ憲法の内容に入りたいと思います。まず,憲法前文からです。前文は,次のように始まります。
「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたって自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。」
ここには,新憲法を作るために,正当な選挙により代表者を選出したことが述べられ,次いで,日本の国民は,自分達だけでなく子孫のためにも,諸外国の国民との協調,和平による成果と,自由(人権)がもたらす恩恵とを確保しよう,そして,政府の行為によって二度と戦争が起こらないようにしようという決意したことが述べられ,この憲法が明治憲法とは異なり,国民主権の憲法だと宣言されています。
日本はドイツやイタリアと共に世界を相手に戦争し,敗北しました。その経験が,新憲法の内容を独特のものにしています。
前に述べたとおり,憲法が人権を保障し,権力分立を定めるのは,世界の常識です。新憲法の特色の一つは,特に戦争について述べていることです。戦争は政府の行為によって引き起こされると名指ししています。それは,ほとんどの普通の人々にとっての実感だったと思われます。