弁護士吉田孝夫の憲法の話(47) 平等ということ(1)

憲法14条1項は、「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」と定めています。福澤諭吉の、「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず」という言葉は有名ですが、明治憲法は、人の上に天皇という人を造り、昭和の軍国主義の時代には、子ども達は学校で、天皇は神様だと教えられていました。厳密に考えれば、今も、憲法14条1項と天皇制との間には矛盾があります。しかし、前にも書きましたように、天皇制に批判的なことを言うのは、新聞、テレビなどではタブー(口に出すと、災いが降りかかることがら)とされているようです。

1776年のアメリカ独立宣言には、「われわれは、以下の事実を自明のことと信じる。すなわち、すべての人間は生まれながらにして平等であり、その創造主によって、生命、自由および幸福追求を含む不可侵の権利を与えられているということ。・・・」と書かれています。1789年のフランス人権宣言にも、「人は、自由かつ諸権利において、生まれながらにして自由かつ平等である。・・・」と書かれています。「創造主」はさておいて、民主主義も法の支配も日本国憲法も、全ての人間は生まれながらにして平等という原理を根本原理としていますから、天皇制は憲法の根本原理から外れます。マスコミでは、女性天皇を認めるか等、皇位継承に関する問題は国の根幹に関わると報道されましたが、天皇制は国の根幹ではありません。

天皇・皇族を初め、家系や血筋によって貴ばれる人が存在するということは、他方で国民の無意識の底に、被差別部落出身の人々や外国人の先祖を持つ人々をさげすむ感情を吹き込んでいると推測されます。日本の場合、その影響が、立法、行政、司法のいろいろな面に現れています。