弁護士吉田孝夫の憲法の話(70) 家族と個人の尊厳

憲法24条2項は、婚姻と家族に関して、「法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。」と定めています。家族は、誰にとっても、かけがえのないものです。もちろん、色々な事情で、両親や肉親と一緒に生活できない子どももいます。その場合も、新たな家族と共に生活することになります。そして、一旦できた家族というものは、尊重されなければなりません。世界人権宣言は、何人も、自己の私事、家族、家庭に対する干渉や攻撃から、法の保護を受ける権利を有する(12条)、家庭は、社会の自然かつ基礎的な集団単位であって、社会及び国の保護を受ける権利を有する(16条)と定めています。国際人権規約(A規約)は、さらに具体的に、「できる限り広範な保護及び援助が、社会の自然かつ基礎的な単位である家族に対し、特に、家族の形成のために、そして扶養する子の養育及び教育について責任を有する間に、与えられるべきである。」(10条1項)、「自己及びその家族のための相当な食糧、衣類及び住居を内容とする相当な生活水準について、生活水準の不断の改善について、すべての者の権利を認める。」(11条1項)と定めています。「生活水準」は、憲法25条にも関わることです。
世界人権宣言や国際人権規約というと、自分たちと離れた、遠くの話のように思われるかもしれませんが、そうではありません。
憲法98条2項は、「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。」とし、99条は、天皇、国務大臣、国会議員、裁判官を含めて、すべての公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負うと定めています。従って、日本のすべての公務員は、憲法98条、99条によって、確立された世界人権宣言、日本が締結、批准した国際人権規約に従う義務があるのです。現実は、必ずしも、そうなっていませんが。