イスラエルのガザへのジェノサイドに思うこと
イスラエルが現在ガザに対して行っていることは、明白なジェノサイドです。
ジェノサイド罪の防止と処罰に関する条約(ジェノサイド条約)
〔1948年12月9日、国際連合総会において採択)第2条は、ジェノサイドを次のように定義しています。
第2条
この条約において、ジェノサイドとは、国民的、民族的、人種的または宗教的な集団の全部または一部を、それ自体として破壊する意図をもって行われる以下のいずれかの行為を指す。
a 集団の構成員を殺害すること、
b 集団の構成員に重大な身体的または精神的な危害を加えること、
c 集団にその全部または一部の身体的破壊をもたらすよう意図した生活条件を故意に 課すこと、
d 集団内の出生を妨げることを意図した措置を課すこと、
e 集団の子どもを他の集団に強制的に移すこと
昨日(10月30日)のBSフジLIVEプライムニュースでは、イスラエル・パレスチナ問題の歴史的経緯について、高橋和夫放送大学名誉教授と池田明史東洋英和女学院大学名誉教授の掘り下げた話が聞けました。
グテーレス国連事務総長は安保理で、ハマスのイスラエル攻撃について、「他と無関係で起こったのではないことを認識することも重要だ。パレスチナの人々は56年にわたり、息の詰まるような占領を受けてきた」、「自分たちの土地が入植によって着実に侵食され、暴力に苦しめられるのを見てきた」と発言したそうです。
56年前の1967年といえば、私の学生時代です。その頃、ベトナムではアメリカは南ベトナムを支援して北ベトナムと戦っており(ベトナム戦争)、日本でも、反戦・平和運動が活発になり、ベトナムに平和を!市民連合(略称ベ平連)が注目を集めていました。
私が学んでいた大阪大学も、反戦の学生運動が盛んで、学生によって教室が封鎖されたために、民事訴訟法のゼミが大学の近くの豊中市内の公民館で行われたり、大阪市内の中之島の理学部の教室で行われたり、教授の自宅で行われたりしました。それはそれで楽しい思い出ですが。
1967年6月、イスラエル軍がエジプトなどに侵攻し、6日間で勝利して、シナイ半島、ガザ地区、ゴラン高原などを占領しました(第3次中東戦争・六日間戦争)。その勝利の結果、イスラエル国民は、占領地と平和の交換取引ができると思うようになり、又、傲慢になって、アラブ民族を見下し始めたということです。それ以来、パレスチナ人はイスラエルの抑圧下に置かれることになりました。これは、日清・日露戦争に勝利して傲慢になった日本人と朝鮮の人々の関係を連想させます。
1993年にアメリカの仲介でオスロ合意が成立し、イスラエルはパレスチナの暫定自治区域から撤退することを約束しましたが、その約束を実行するどころか、パレスチナへの浸蝕を拡大していったのです。
グテーレス事務総長はその歴史的経緯を正当に指摘しましたが、これにイスラエル政府は逆上し、グテーレス事務総長の辞任を要求しました。
本年10月7日、パレスチナ人が居住するガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスは、イスラエルに大量のロケット弾を打ち込むなどの奇襲攻撃を行い、イスラエルは、それに対する報復攻撃を行っているという状況です。この部分を見れば、先制攻撃を行ったのはハマスであり、悪いのはハマスで、イスラエルの攻撃は正しい戦争だということになりそうです。しかし、歴史的経緯を見れば、一方的ににハマスが悪いとは言えない事情もあることが分かりますし、イスラエルが行っているジェノサイドは明白に国際法違反だと言わなければならないでしょう。
そして、ウクライナでの戦闘と同じく、何を差し置いても、殺し合いを止めさせることが至上命題だと考えます。ウクライナでの戦闘はロシアが悪であり、ウクライナは正義だから、ウクライナ政府に武力支援を行うべきだという人が多いのですが、私は人命尊重こそ最優先されるべき正義だと思います。
憲法に書かれているとおり、戦争は政府の行為によって起こります。民衆は、政府に戦争を起こさせないように、常々用心しなければなりません。そのために必要なことの一つは、かつての日本のように傲慢にならないこと、他国の人々を見下すことがないよう、心掛けることだと思います。
ガザでも、まず、殺し合いをやめさせた上で、民衆の人命第一、生活第一かつ、実効性を永続的に保障する和平条約を考えるべきだと思います。日本は何をしているのでしょう。
イスラエルとアラブ諸国の間で、根本的解決がなされないままで長く放置されてきたこと、オスロ合意をイスラエルが一方的に破っても非難されなかったこと、イスラエル国民の傲慢を誰もたしなめることが出来なかったことが、病膏肓の原因だと思われます。
世界は新自由主義が蔓延し、益々経済第一、マネー第一、生命よりお金という考え方が人々の意識を支配するようになっていますが(現に大量殺人が行われているのを見ながら、石油が値上がりすることを心配しているなど)、人の意識を根本的に変えなければ戦争はなくならないと思われます。