弁護士吉田孝夫の憲法の話(9) 新憲法の成立
GHQは,1946年2月13日,憲法草案を作成し,日本政府に渡しました。これがマッカーサー草案と呼ばれるものです。草案作成に着手してから13日でできたのです。
憲法改正について,国会で審議するために,同年4月10日,総選挙が行われました。しかし,その時には,まだ政府の憲法改正草案はできていませんでした。
政府がマッカーサー草案を元にして,政府案を作成するまでには,天皇の地位や戦争放棄などに関して政府内で議論がありました。また,草案を分かりやすい文章にするために,「路傍の石」などの作品を書いている作家の山本有三に口語化を依頼し,政府案が公表されたのは,総選挙の7日後,4月17日のことでした。
マッカーサー草案と政府案との大きな違いは,外国人が平等に法の保護を受けるという規定が削除されたことや,国会が一院制から二院制になったことです。
世論の大半は,政府案の国民主権も戦争放棄も歓迎しました。
同年6月,天皇の戦争責任を問う連合国側の主張も沈静化し,政府の憲法案が国会に上程されました。
憲法改正の国会審議の過程で,憲法の条項が微妙に修正され,後々,議論を残す結果になった部分もあります。ともあれ,改正案は同年8月26日,衆議院で可決され,貴族院で10月6日修正議決されて衆議院に回付され,翌日衆議院で同意議決され,10月29日,枢密院で可決されて新憲法が成立しました。