弁護士吉田孝夫の憲法の話(41) 反省によって生まれた憲法条項(2)
憲法31条以下の規定も、反省によって憲法に定められた条文です。31条は、「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。」と定めています。これは、アメリカ合衆国憲法修正第5条の、「正当な法の手続(デュー・プロセス・オブ・ロー)によらないで、生命、自由又は財産を奪われることはない。」という規定に由来します。そのため、日本の憲法には、「正当な(デュー)」という言葉が入っていませんが、当然、それが入っているものとして解釈されています。このような解釈に基づいて、憲法31条は、適正手続条項、デュープロセス条項と呼ばれています。
明治憲法には、このような規定がなく、政府が決めた政策に反対する人々が、いきなり引っ張られて拘束されたり、ひどいときは殺されたりもしました。そのため、日本が中国や東南アジア、ついには世界を相手にする無謀な戦争に、歯止めがかからなくなってしまったのです。
アメリカは日本のような制定法主義ではなく、判例法主義の国ですから、デュープロセスの中身も、判例によって充実させられてきました。その重要なものとして、スーパー・デュープロセスがあります。いわゆる先進国の中で、死刑制度を残し、死刑を執行している国は、現在アメリカと日本だけですが、アメリカと日本とでは、その手続きに大きな違いがあります。日本では、死刑判決を言い渡す場合と、それ以外の刑を言い渡す場合とは手続きに違いはありません。ところが、アメリカでは、連邦最高裁の判例により、死刑判決の誤判を徹底的になくすため、スーパー・デュープロセスという特別な手続きが必要とされ、死刑求刑が予測される事件では、起訴から再審まで、簡単に死刑の執行ができない仕組みになっています。そして、アメリカでも死刑廃止の世論が高まっているそうです。