弁護士吉田孝夫の憲法の話(13) 憲法本文に入る前に

憲法の3原則というのを学校で学ばれたと思います。国民主権,基本的人権の尊重,平和主義の3つですね。立憲主義というのは,それに先立つ基本原理です。

前に,明治憲法も近代立憲主義と無関係ではないと述べました。しかし,大正デモクラーを経て昭和の時代に入ると,天皇は神様だという教育の力によって,立憲主義の思想は完全に抑圧されました。

その反省に立って,憲法の理想の実現を目的とする教育基本法が制定されました。教育基本法の前文は,次のように始まっていました。
「われらは、さきに、日本国憲法を確定し、民主的で文化的な国家を建設して、世界の平和と人類の福祉に貢献しようとする決意を示した。この理想の実現は、根本において教育の力にまつべきものである。」

こうして,日本の民主主義教育が始まりました。しかし,日本の政治が全般的に民主化に逆行する傾向を帯びるにつれ,教育に関しても,少しずつ国家統制を強められ,2006年(平成18年)には,ついに教育基本法が全面改正されました。

憲法99条の,「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」という規定は,立憲主義を明確に表しています。天皇,摂政,国務大臣(この「国務大臣」は総理大臣を含みます。),国会議員,裁判官その他の公務員すべては憲法を守る義務があります。

これに対し,びっくりされるかも知れませんが,権力を持たない国民には,憲法を守る義務はありません。