児童相談所(児相)と違憲の人身保護法制(3)

人身保護法9条は、「適法な請求があり,移送しない場合,審問期日の調べのために準備調査をすることができる、11条は、「準備調査の結果、請求の理由のないことが明白なときは、裁判所は審問手続を経ずに、決定をもって請求を棄却する。」と規定しています。つまり、公開法廷での審問期日を開くべきか否かを判断するために準備調査をすることも可能とされています。一時保護の間、母親が子どもに会うことはできず、完全に子どもと遮断されていますが、公開法廷では、母親は法廷で子どもに会うことができます。

同法12条は、「裁判所は、請求のあった日から1週間以内に審問期日を開かなければならない。」と定めていますから、準備調査は、請求のあった日から1週間以内の公開法廷の審問期日予定日より前に終わっていなければなりません。

私が人身保護請求を裁判所に提出したのは6月26日ですから、1週間目の7月3日が審問期日の期限でした。そうすると、準備調査は遅くとも7月2日には終わっていなければならないはずです。ところが、小田島靖人裁判長は少しも慌てることなく、7月3日に準備調査をする決定を行いました。つまり、裁判所は最初から、人身保護法が定める公開法廷での審問手続を行う気がないのです。

児相が裁判所に提出した資料の中には、母親が子どもを虐待している旨の匿名の投書がありました。しかし、子どもが虐待で負傷したという診断書のようなものはありませんし、母親からの聴き取りのような資料もありません。答弁書には、子どもは自らの意思に基づいて児相の一時保護下にとどまっており,拘束ではない旨、書かれていますが。拘束であることは明白です。6歳の子どもが自分の意思でとどまっているから拘束ではないというのは無茶な主張です。

私は、憲法31条、33条ないし35条違反を主張しましたが、裁判所は、一時保護が2カ月間という短期間!であり、2か月を超える場合は家庭裁判所の承認が必要とされており、公益目的、緊急の必要性を有し、常に事前に告知、弁解等の機会を必要とすることは、処分の目的や性質に照らし不相当であり、刑事責任に結びつくものではないから違憲ではないと判示し、請求に理由がないことが明白であるとして、審問を経ずに請求を棄却しました。

裁判所は、一時保護は刑事手続ほど人権侵害にならないと判断しています。実際はどうでしょうか。刑事事件の被疑者として身体を拘束された場合と比較してみます。

身体拘束の時間
逮捕、起訴前の勾留  2日+10日、ただし、10日の延長、5日の再延長が認められる。
一時保護処分   2か月、ただし、2か月ごとに家庭裁判所の承認を得て満20歳まで続く可能性がある。

弁護人等の援助
逮捕・起訴前の勾留  弁護人に依頼する権利が認められる。
一時保護処分  援助の保障はない。

面会・通信
起訴前の勾留  裁判所による接見禁止の決定がない限り、可能。
一時保護処分  認められない。

異議申立等
起訴前の勾留  準抗告、勾留理由開示(公開法廷)の申立て及び勾留取消しの申立てができる。
一時保護処分  行政訴訟になるが、長期間を擁し、2か月ごとの一時保護に適さない。行政事件の勝訴率は極めて低く、仮の救済もほとんど認められない。

このように刑事手続と比べて、一時保護は不当な処分を受けた者にとっては苛酷です。しかし、裁判所は前述のような理由で人身保護請求を門前払いし、母親は子どもに会うことが出来ませんでした。