日本司法支援センター(法テラス)は違憲(5)

5 法テラスはマチ弁を従属させる

弁護士の仕事には刑事弁護のほか、民事事件や行政事件等もあります。「マチ弁」というのは、普通の人々が抱える法的な悩みや問題の解決に取り組んでいる普通の弁護士のことです。町医者から連想されるような弁護士、法律事務所のことです。訴訟を起こしたくてもそれに必要な資金がない人や、訴訟を起こされたけれども、弁護士に依頼する費用がない人に対して資金援助をする制度(法律扶助制度)は各国にあります。その援助の仕方は国によって様々です。民間の援助団体が行う制度もありますが、多くの場合、国が資金を援助します。

民事事件でも、力関係による解決がまかり通っては、国の法秩序が維持できません。法の支配は人権宣言等の国際法による国の責務であり、憲法の基盤である立憲主義の要請でもあります。日本国憲法32条は、「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。」と定めており、裁判を受ける権利は基本的人権の一つと考えられます。

憲法37条1項は、「すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。」と定めていますが、「公平」というのは刑事事件に限らず裁判の本質です。社会的弱者が資金がないために不利益を被るのを国が放置することは、憲法32条に反します。国が裁判のための資金援助をする根拠は以上のとおりです。

現在日本で法律扶助を行う主体は法テラスになっています。法律扶助も国選弁護と同様に、法テラスは依頼者の弁護士費用を立て替えるというのが原則で、法テラスに返済するのが困難な人には特別に返済義務を免除するという仕組みになっています。弁護士は依頼者から報酬を受け取って仕事をするのが、その本質的部分ですから、法テラスがお金を出す相手は弁護士ではなく、依頼者です。

ところが、実際の法律扶助制度は弁護士が法テラスと契約しなければならず、その契約条項によって弁護士は様々な制約を受けます。つまり、法テラスと契約した弁護士(「契約弁護士」といいます。)は、契約によって法テラスに従属することになるのです。

もっとも、総合法律支援法33条には、
「契約弁護士等は、支援センターが第三十条第一項又は第二項の業務として取り扱わせた事務について、独立してその職務を行う。
2 支援センター及び契約弁護士等は、その法律事務の取扱いを受ける者に対し、前項に規定する契約弁護士等の職務の独立性について、分かりやすく説明しなければならない。」
という規定がおかれていますが、実態を隠蔽する条文でしかありません。「支援センター」というのは法テラスのことです。

33条に引き続いて、次のような条項があります。34条は「業務方法書」、35条は「法律事務取扱規程」に関する定めです。どちらも法務大臣の認可が必要です。

第34条 支援センターは、業務開始の際、業務方法書を作成し、法務大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 前項の業務方法書には、次に掲げる事項その他法務省令で定める事項を記載しなければならない。
一 第30条第1項第2号から第4号までの業務及びこれらに附帯する業務(以下「民事法律扶助事業」という。)に関し、民事法律扶助事業の実施に係る援助の申込み及びその審査の方法に関する事項、同項第2号イ及びハに規定する立替えに係る報酬及び実費の基準並びにそれらの償還に関する事項、同号ロ及びニに規定する報酬及び実費に相当する額の支払に関する事項並びに同項第3号の業務の実施に係る援助を受けた者の費用の負担に関する事項。この場合において、当該報酬は、民事法律扶助事業が同項第2号に規定する国民等を広く援助するものであることを考慮した相当な額でなければならない。
二 (以下略)

第35条 支援センターは、第30条に規定する業務の開始前に、契約弁護士等に取り扱わせる法律事務の処理に関する規程(以下「法律事務取扱規程」という。)を定め、法務大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 法律事務取扱規程には、契約弁護士等による法律事務の取扱いの基準に関する事項、契約弁護士等がその契約に違反した場合の措置に関する事項その他法務省令で定める事項を記載しなければならない。
3  (以下略)

つまり、法テラスが法務大臣の弁護士の報酬等の基準を定め、法務大臣が認可するのです。弁護士は本来自由に報酬額を決められるのに、法律扶助による依頼の場合には、弁護士は法テラスの業務方法書や法律時取扱規程や契約書によって縛られ、それに従わないと、不利益を負わされます。契約弁護士の行動は法テラスによって監視されることになります。

実際、依頼者から元夫に対する養育費請求事件の依頼を受け、法テラスに援助を申し込み、援助決定を受けた上、依頼者からも着手金等を受領し、依頼者及び法テラスから、依頼者が支払った分を依頼者に返還するよう求められたにもかかわらず、返還を拒絶したという理由で、弁護士会から、業務停止1か月という厳しい懲戒処分を受けた弁護士がいます。

民事法律扶助に関しては、前に取り上げた国選弁護人の報酬に関する弁護士職務基本規程49条のような規定はありません。しかし、法テラスの契約条項24条に、「受任者等は、事件の処理に関し、被援助者のために金銭を立替え又は被援助者から金銭その他の利益を受けてはならない。」とあり、契約違反については弁護士会に通知される仕組みになっています。上記業務停止1か月の懲戒処分には、懲戒請求者がないようですから、弁護士会は自主的に立件して懲戒処分を行ったと考えられます。弁護士会と法テラスの連携によって、法テラスと契約した弁護士は、自由を束縛され、従属させられるのです。