弁護士吉田孝夫の憲法の話(22) 第9条と世界

世界には軍隊を持たない国があります。日本は憲法第9条にもかかわらず、軍隊を持たない国とは言えません。憲法違反の自衛隊があるからです。

ローマ教皇庁のあるバチカン市国は日本の皇居よりも面積が小さい、世界最小の国ですが、一応軍隊があります。ローマ教皇の衛兵ですが、100人ほどで、バチカンはイタリアの中にあるのに、軍隊は歴史的にスイス人の傭兵だそうです。

軍隊のない国は、メキシコの南東、パナマの隣にあるコスタリカ共和国です。カリブ海と太平洋に挟まれた小さな国で、面積は、九州と四国を合わせたほど、人口は約500万人です。1948年に憲法で、常設の軍隊を廃止し、ただ、有事の際には徴兵が可能とされています。

これに対し、日本の憲法第9条は、有事でも軍隊は認めていません。1899年に第1回ハーグ万国平和会議という国際会議が開催されたことを記念して、1999年、NGO(非政府組織)によりハーグ平和アピール市民会議がオランダのハーグで開催されました。その2008年3月の会議には世界100カ国以上から約1万人の平和運動家などが集まったということですが、その会議で採択されたアジェンダ(達成工程)の中に、「日本の憲法第9条を見ならい、各国議会は自国政府に戦争をさせないための決議をすべきだ」という内容が盛り込まれました。

憲法前文に、「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。」とありますが、第9条は国際社会において名誉ある地位を占めています。国民の方は、さあ、どうでしょうか。