弁護士吉田孝夫の憲法の話(28) 国民の三大義務
前に、権力を持たない国民には憲法を守る義務はありませんと書きました。
しかし、憲法第3章は「国民の権利及び義務」という標題になっているので、疑問を持たれたかもしれません。実際、憲法には、国民の三大義務として、教育の義務、勤労の義務、納税の義務の規定があります。これはどういうことでしょうか。
まず、教育の義務を見ましょう。憲法26条は、国民は教育を受ける権利があり、保護者である国民は子どもに教育を受けさせる義務を負うと定めています。これは、子どもには教育を受ける権利かあるので、保護者はその権利を妨害しないようにしましょうということです。それで、例えば子どもが登校拒否の場合、保護者が子どもを強制的に学校に連れて行かないと、罰せられるというようなものではありません。
憲法27条は、すべての国民には勤労の権利・義務があると定めています。しかし、勤労の義務があるからと言って、強制労働に従事させるというようなことはできません。憲法18条に、「その意に反する苦役に服させられない。」と書かれていることからも明白です。
憲法30条には納税の義務が定められています。国はひとつの組織体ですから、その構成員が運営の費用を負担するのは当然で、国民は大昔から納税義務を担わされてきました。憲法30条は、権力者が勝手気ままに国民から税金を取ることを認めず、国民の代表である国会で決められた法律に基づかなければならないと定めたところに意味があります。「代表なければ課税なし。」というのは、アメリカ独立戦争の時のスローガンのひとつだそうです。