裁判官弾劾裁判所だけでなく分限裁判制度も違憲(7)

7 分限「裁判」の性質
岡口裁判官に対する懲戒処分の「裁判」は、前に述べましたように、最高裁大法廷で行われました。大法廷の裁判官は最高裁の裁判官全員(15人)です。ただし、第1回の懲戒処分では、1人が懲戒処分の手続に加わることを差し控えた(「回避」といいます。)ため、14人の裁判官で判断されました。又、第2回の懲戒処分では、2人が回避したため、13人の裁判官で判断されました。回避の理由は、前に岡口裁判官に対する厳重注意処分に関与した等ということです。

第1回の懲戒処分には、3人の裁判官の補足意見が付いています。その内容は次のとおりです。
 1 本件において懲戒の原因とされた被申立人の投稿は、公正中立を旨とすべき裁判官として不適切かつ軽率な行為であり、現役裁判官が原告の提訴行為を揶揄している投稿であると受け止められてもやむを得ない。
 2 しかも被申立人は、本件に先立つ2年余りの間に、同様のいくつかの投稿の内容につき、東京高等裁判所長官から2度にわたって、口頭又は書面による厳重注意を受けている。
中でも、2度目の厳重注意を受けた投稿は特定の性犯罪に係る刑事訴訟事件の判決について行ったもので、本件ツイート以上に明白かつ著しく被害者遺族の感情を傷つけるものであった。その意味で、これは本件ツイートよりも悪質で、裁判官として不適切で、裁判所に対する国民の信頼傷つける行為であるとして、それ自体で懲戒に値するものとも考える。
 3 この2度目の厳重注意から僅か2か月余りしか経過していない時に、やはり特定の訴訟について訴訟関係者の感情を傷つける投稿を再び行ったことには、もはや宥恕の余地はない。懲戒処分相当性の判断に当たり、本件ツイートは、いわば「the last straw」(ラクダの背に限度いっぱいの荷が載せられているときは、麦わら一本積み増しても、重みに耐えかねて背中が折れてしまうという話から、限界を超えさせるものの例え)ともいうべきものであろう。
 4 被申立人は、厳重注意措置の対象となった過去の投稿に係る一事不再理を主張するが、本件の処分理由は,過去の行為そのものを蒸し返して再度問題にするものではなく、過去2回受けた厳重注意と、特に2度目の厳重注意を受けた際の反省の弁にもかかわらず、僅か2か月余りが経過したばかりで同種同様の行為を再び行ったことを問題としているものである。
 5 現役裁判官がツイッターにせよ何にせよ、SNSその他の表現手段によってその思うところを表現することは,憲法の保障する表現の自由によって保護されるべきであることは、いうまでもないが、裁判官はその職責上、品位を保持し、裁判については公正中立の立場で臨むことなどによって、国民の信頼を得ることが何よりも求められている。本件のように、裁判官であることが広く知られている状況の下で表現行為を行う場合には、そのような国民の信頼を損なうものとならないよう、その内容、表現の選択において、取り分け自己を律するべきである。

この補足意見は、懲戒申立書の申立理由が取るに足りないものであっても、最高裁は、それ以外に、被申立人である裁判官の過去の行状を広く探索して懲戒処分を行うことができるということを意味します。この補足意見には、次のような言葉が添えられています。
「裁判官も、一国民として自由な表現を行うということ自体は制限されていないのであるから、本件のような事例によって一国民としての裁判官の発信が無用に萎縮することのないように、念のため申し添える。」

これは、分限裁判が裁判官を萎縮させる性質の制度であることを自白したものと言えます。語るに落ちたとはこのことです。補足意見を書いた3人の裁判官のうち、1人は通産官僚、1人は外務官僚、1人は弁護士の出身ですが、弁護士出身の裁判官の夫は元財務官僚だそうです。

憲法は裁判官の独立とそのための身分保障を定めているはずなのに、萎縮するというのは矛盾です。

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