弁護士吉田孝夫の憲法の話(31) 憲法を解釈するということ(3)

憲法の解釈について難しいことを書きましたが、要は、憲法の解釈を「偉い人」に任せておくだけでは、知らぬ間に人権がなくなってしまうかもしれないので、一人一人の「権利のための闘争」が必要だということです。もちろん、それには法律の専門家の助けも必要ですが。

憲法12条は、「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。」と書かれていますが、これは一人一人に対する憲法からの警鐘です。自由及び権利を保持するというのは、人権のことを学んで、選挙や、訴訟や、色々な方法で意見を示すことです。

「権利」について多くの日本人が思い浮かべるイメージと、元々の欧米でのイメージは、相当違うのではないかと思います。日本では「権利」というと利己主義的なイメージを伴いがちですが、英語でもフランス語でもドイツ語でも、「権利」に当たる言葉には正しいという意味が含まれています。ですから、権利を主張するということは、正しいことを主張することになるわけです。

憲法の解釈の基本は、法律は憲法の解釈の根拠にならないということです。例えば憲法32条は、「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。」と定めていますが、この「裁判所」とか「権利」とは何でしょうか。それについて、裁判所法にこのように書いてあるというのは憲法の解釈ではありません。これでは、憲法は国の最高法規とされ、憲法に反する法律等は無効であるとされているのに(98条)、裁判所法や、その他、裁判に関して定めた法律が合憲か違憲かを判定できません。