ロシアのウクライナ攻撃について思うこと

ロシアのプーチン大統領の行動が人命軽視であることは、ほとんどの人が認めています。それと同時に、ほとんどの人が、ウクライナのゼレンスキー大統領を応援しています。

国際法に違反しているのはロシアです。しかし、ゼレンスキー大統領も、欧米諸国の首脳達も、武力対武力、経済力対経済力という力対力で平和を達成できるという思想で行動している点で、プーチン大統領と大して違いはありません。ウクライナでは18歳から60歳までの男性は、戦闘要員として出国が禁止されています。

こういう人達は、国民の命を政策の手段として利用できると考えています。しかし、個人にとって、生きるということは最重要です。又、軍備があれば他国から攻められないという命題は証明されたことがありません。

ゼレンスキー大統領は、NATOという軍事同盟に加わることによって、平和が維持できるという考えに基づいて行動しました。プーチン大統領が間違っているなら、ゼレンスキー大統領も間違っています。ついでに言えば、日米同盟も軍拡も間違っており、9条による非武装が、理想論ではなく、正しいと考えます。その道筋を付けるのが外交努力です。武力や経済制裁に頼る外交は、平和外交をサボタージュしています。

過去に、欧米がアフガニスタンやイラクでやったことは国際法に違反しているはずですが、世界的に、あまり非難されませんでした。

イラク戦争では、アメリカを中心とする有志連合軍は、イラクに大量破壊兵器があるというデマに基づいて、イラクを攻撃し、劣化ウラン弾やクラスター爆弾を降らせ、アメリカが認めている数だけでも10万人を殺害しています。直接間接の死者を含めると、50万人以上とも言われています。負傷者や後遺症に悩まされている人は、数知れません。近親者や親しい人を失って悲嘆に暮れている人も、数知れません。イラク戦争で被害を受けた側のフセイン大統領は処刑されましたが、イラクを攻撃して大量殺人を行った側は、誰も戦争犯罪人になっていませんし、被害者に謝罪も償いもしていません。法の支配がご都合主義になっています。

欧米の大国は、「大量破壊兵器があると思って、非人道的な爆弾を降らせて、いっぱい殺しちゃったけど、大量破壊兵器なかったね、ごめん。」というようなことさえ言わずに済ませてしまいました、日本もイラク攻撃を支持しましたが、支持は誤りだったとは認めず、フセインが悪かったと言って、涼しい顔をしています。私は、被害を受けた人を痛ましいと思い、それに対し何もしないことを恥ずかしいことだと思っていますが、ほとんどの人は、何とも思っていないようです。

アフガニスタンでは、中村哲医師が民衆のために貢献されました。本当に尊敬しますし、涙が出そうになります。中村医師は、自分がアフガンで活動できるのは憲法9条のおかげだと言われていたそうです。

作家のアナトール・フランスは、小説のなかで、シューレットという変人に、次のように言わせています。

「兵営というものは近代の忌むべき発明です。その起源は近々十七世紀のことなのです。それ以前にはただ衛兵隊があっただけ、老いぼれ兵がカルタをやったり、たわいない話をしていたものです。ルイ十四世は《革命評議会》やボナパルトを生む基をつくったひとりです。しかし、国民皆兵などという言語道断な制度ができて以来、弊害はその極に達したのです。人を殺す義務を人民に負わせたことは、皇帝や共和国の恥です。罪悪中の罪悪です。いわゆる野蛮時代には、都市や諸侯は戦争をやるにも抜け目のない慎重な傭兵を雇って防備をまかせておいたのです。ときには、大きな戦争をしても、わずか五、六名の戦死者しかださないことがあったのです。それに騎士は出征する場合でも、なんら強制されたわけではありません。彼らは自分らの道楽から戦死を選んでいたのです。ほかにはなんの役にも立たぬ連中だったにはちがいありません。聖王ルイの時代には、学識あり分別ある人間を戦場に送ろううなどということは、考えてもみなかったのです。それにまた、百姓を無理やりに畠から引き離して、陣中に連れて行くなどということはしませんでした。いまじゃ、一介の百姓が兵役の義務を負わせられている。金色に輝く静かな夕方、屋根に煙の立ちのぼる家から、牛が草を食んでいる緑の牧場から、畠から、父より受け継いだ森から駆り出され、汚い兵営の中庭で規律に従って人間を殺す方法を教えられる。脅かされ、口汚く罵られ、営倉にぶちこまれる。それが名誉だと言われ、さような名誉は真っ平だと言えば、銃殺されるまでです。いつもびくびくしていて、あらゆる家畜のうちでも、これくらい従順で気持ちのよい御しやすい動物はありませんから、言うことを聞くわけです。われわれは、フランスでは軍人であり、国民(シトワイヤン)です。国民であるということは、もうひとつの誇りの理由なのですよ! それは、貧乏人にとっては金持の権力と閑とをいつまでも支えてやることなのです。」
アナトール・フランス「赤い百合」(小林正訳)

国は、当然のように人の命を奪い、あるいは危険にさらしますが、ゼレンスキー大統領であっても、無批判に応援するべきでしょうか。ゼレンスキー大統領は、まだまだ殺し合いをやる気満々ですし、欧米諸国はウクライナに武器を供給して、代理戦争をやらせる気満々です。命を落とすのは、多数の一般国民です。勇ましい人々が国策を決定している間は、死者が増えるばかりだと思います。

兵は凶器なりという格言を常に想い起こす必要があると思います。