弁護士吉田孝夫の憲法の話(35) 憲法に書かれていない人権

憲法14条以下には、平等、請願、国家賠償請求、奴隷的拘束からの自由、意に反する苦役からの自由、思想・良心の自由、信教の自由、集会・結社・表現の自由、検閲を受けない自由、通信の秘密、居住・移転の自由、職業選択の自由、外国移住の自由、国籍離脱の自由、学問の自由、婚姻の自由、健康で文化的な生活の保障、教育、労働、財産、適正手続の保障、刑事被告人となった場合の公平な裁判所の迅速な裁判、抑留・拘禁に対する保障、住居侵入されない保障、捜索・押収に対する保障、刑罰法規をさかのぼって適用されない保障、二重処罰を受けない保障、刑事補償、政治への参加という、各種の人権が定められています。

アメリカ合衆国憲法には、「本憲法中に特定の権利を列挙した事実をもって、人民の保有する他の諸権利を否定あるいは軽視するものと解釈してはならない。」と書かれています。つまり、憲法に書かれていない人権も、憲法に書かれている人権と同じように保障されるということです。日本の憲法は、13条で、「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」と定め、列挙されていない人権は、13条の幸福追求権として保障されると解釈され、人権の拡張に対応しています。たとえばプライバシー権などは、13条によって人権と認められています。人権と認められれば、裁判所は違憲審査権により、人権侵害に対する救済を行うことになります。

世界人権宣言や国際人権規約や子どもの権利条約に書かれている人権も、憲法13条によって保障されるはずですが、日本の裁判所は人権の保障にあまり積極的ではありません。そのため、国連の規約人権委員会や子どもの権利委員会からは、たびたび、日本の立法、司法、行政に対し、改善の要請や勧告がなされています。