弁護士吉田孝夫の憲法の話(15) 新憲法下の天皇の実情

憲法は,天皇が形式的な国事行為のみを行い,国政に実質的に関与することを禁止しています。

しかし,早くも1947年には,天皇は禁止を破って,GHQに次のような趣旨のメッセージを送りました。これが,戦後の皇室外交第1号です。
(1) 米国による沖縄の軍事占領の継続を望む。
(2) 上記占領は,日本の主権を残したままで長期租借によるべき。
(3) 上記手続は,米国と日本の2国間条約によるべき。

憲法8条は、「皇室に財産を譲り渡し,又は皇室が,財産を譲り受け,若しくは賜与することは,国会の議決に基かなければならない。」としています。
又、憲法88条は、「すべて皇室財産は,国に属する。すべて皇室の費用は,予算に計上して国会の議決を経なければならない。」としています。

これは,天皇が強大な経済的力を持つことを予防する規定です。しかし,天皇や皇族の私有財産の所有は禁止されていません。又,皇室が財産を譲り受ける場合,全て国会の議決を要するという訳ではなく,
(1) 相当の対価による売買等通常の私的経済行為に係る場合
(2) 外国交際のための儀礼上の贈答に係る場合
(3) その他,天皇,皇后,皇太子等が行う賜与については年間各1800万円まで,譲り受けについては年間各600万円まで
は議決不要です。

昭和天皇の遺産については,課税価格が約18億円だったそうです。そんなに少ないの?と思われるかもしれませんが,財産のほとんどが国有財産で非課税ですから18億円はほぼ金融資産ではないでしょうか。私有財産とされる三種の神器なども非課税です。天皇家の経済力は,課税資産額だけでは測れません。