日本司法支援センター(法テラス)はダメ、違憲(4)

4 刑事弁護を歪めるもの

弁護士は憲法に登場する唯一の民間の職業です。弁護士法1条には、弁護士の使命が次のように定められています。

弁護士法1条
弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする。
2 弁護士は、前項の使命に基き、誠実にその職務を行い、社会秩序の維持及び法律制度の改善に努力しなければならない。

このように、弁護士は公的な責務を負わされていますが、その収入源は依頼者から受け取る報酬、手数料です。税金で生活するわけではなく、税金から補助も出ません。弁護士の団体である弁護士会や日本弁護士連合会も、基本的に会員である弁護士の会費によって運営されています。ただ、公的な委託を受けて行う仕事には公的な資金が使われますが、それは賃金と同様に、その仕事の対価です。

1999年に司法制度改革審議会(司法審)が発足して始まった司法制度改革では、弁護士も市場で自由競争をさせることにより効率化が図れるとされ、効率化の妨げになる弁護士は市場で淘汰すべきであるという基本理念に基づいて、弁護士の急激な増員や広告の自由化が進められました。日弁連が定めていた弁護士の報酬基準も独占禁止法に違反すると言われて廃止されました。弁護士の増員に弁護士が反対するのは既得権益を守ろうとする不当な主張だと言われたものです。

ところで、自由競争というのであれば、自由競争を妨げる要因は極力排除しなければならないはずです。しかし、弁護士の競争市場には、自由競争を妨げる巨大な組織があります。それが法テラスです。

刑事弁護の領域では、現在私選弁護はごくわずかで、大半が国選弁護です。国選弁護人の報酬は低く抑えられているため、国選弁護の報酬は、刑事弁護の報酬の相場を引き下げる方向に強く働きます。これでは自由競争になりません。国選弁護は特に貧困な人々だけが利用できる制度ではなく、資力に関係なく利用できるので、この市場では、私選弁護はよほど有名な弁護士で高額の弁護士費用でも依頼を受けられる弁護士以外の普通の弁護士は、法テラスに到底太刀打ちできません。法テラスは刑事弁護を扱う弁護士の大半を擁する巨大組織である上、国選弁護の報酬額を一方的に決める権限を持ち、弁護報酬額を、採算を度外視して低額に抑えています。

私選で刑事弁護をしようとする弁護士は、圧倒的多数の国選弁護人と競争関係に立ちます。私選弁護の場合、採算を考えないわけにはいきませんが、国選弁護人の場合、法テラスの下で、採算を考えずに法テラスから押しつけられた報酬で仕事をするので、刑事弁護報酬全体の相場を押し下げる方向で大きな影響力があります。

それだけではなく、個々の刑事弁護活動のうち、どの活動に報酬を出し、どの活動に報酬を出さないといったことや、どのような費用を必要な費用と認めるかといったようなことを通じて、弁護活動を歪めるという点も軽視できません。

刑事訴訟法289条1項は、「死刑又は無期若しくは長期3年を超える懲役若しくは禁錮にあたる事件を審理する場合には、弁護人がなければ開廷することはできない。」として、弁護人抜きの公判が開かれないよう、被告人の正当な権利が侵害されないように配慮しています。同条2項は、「弁護人がなければ開廷することができない場合において、弁護人が出頭しないおそれがあるときは、裁判所は、職権で弁護人を付することができる。」と定めています。弁護人が出頭しない原因は、病気で出頭できない場合もありますが、弁護活動をめぐって弁護人が裁判所と対立した場合もあり得ます。後者の場合、被告人と信頼関係のない、裁判所に協力的な弁護人が選任されて裁判所に出頭し、迅速に裁判を進めてしまうおそれがないとは言えません。

刑事訴訟法316条の8は、公判前整理手続期日に弁護人が出頭しないおそれがある場合、裁判長は職権で弁護人を付さなければならないとして、職権主義を強化しています。そして、いずれの場合にも、その弁護人を供給するのは法テラスです。