弁護士吉田孝夫の憲法の話(25) 基本的人権は外国人にも保障されるか

外国人は日本の「国民」とは言えないので、憲法11条の人権保障の対象に含まれるかどうかが問題になります。しかし、この点については最高裁も1950年に、「いやしくも人たることにより当然享有する人権は不法入国者と雖もこれを有するもの」と認めました。

その上で、最高裁は、人権の性質上、日本国籍を有する者にしか保障されないものがあるという見解を示しています。しかも、外国人には保障されない人権の代表的なものは参政権です。そこから、最高裁は、外国人は政治活動の自由が制限されるという判断を導き出しています。公務員になる権利なども否定されていました。しかし、ヨーロッパ連合(EU連合)内では、一定の期間定住している者には地方参政権が認められたということから、最高裁も地方参政権については、外国人にその権利を認める方向になっています。

外国人の政治活動の自由に関しては、最高裁は「マクリーン事件」で、原則として保障されるとの見解を示しましたが、それは外国人在留制度の枠内で与えられているに過ぎないもので、在留期間を延長するか否かは法務大臣の裁量に任されているから、法務大臣が当人の政治活動を判断要素として延長を拒否しても違法ではないと判断しました。しかし、これでは政治活動の自由が保障されると言っても、それを理由に国外退去を命じられるのでは、保障されたことにならないという批判があります。

日本には、憲法施行時に日本国籍を有しており、人権を保障されていたはずの在日韓国・朝鮮人がいます。1952年4月28日、サンフランシスコ講和条約発効によってGHQの占領が終了した時に、日本政府は通達により、その人達の日本国籍を剥奪しました。一片の通達で突然外国人扱いになったというのは奇妙なことと思われます。