弁護士吉田孝夫の憲法の話(40) 反省によって生まれた憲法条項(1)

憲法の中の人権保障を定めた部分は権利章典と呼ばれます。アメリカ合衆国(合州国と書く人もいます。アメリカの州はステイツつまり国ですから、アメリカ連邦という方が、より正確ではないかと思います。)憲法には当初権利章典がなく、人権に関する規定は「修正〇条」という形で追加されました。修正第1条は、国教の禁止、信教の自由、言論・出版・集会の自由、請願する権利を保障していますが、修正第2条は、武器を所有し、携帯する権利という、日本人から見れば、物騒な権利を保障しています。そのことからは、憲法が保障する人権には、その国の歴史的な由来があることが分かります。
明治憲法体制の崩壊、敗戦という過去の失敗に基づく反省が日本国憲法に大きな影響を及ぼしていることは当然です。
憲法20条は、「信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。」と定め、信教の自由の保障はアメリカより厳重です。
明治憲法も、「日本臣民は安寧秩序を妨げず及び臣民たるの義務に背かざる限りに於て信教の自由を有す」と定めていました。しかし、天皇は現人神として神社の総元締めとされていましたから、神道が事実上の国教になり、国の政策に従わない宗教が迫害されたばかりでなく、昭和の無謀な戦争に反対する者も激しい迫害を受けました。結局、吹くと言われた神風も吹かず、敗戦を迎えましたが、日本人の死者300万人以上、アジア太平洋各国の死者2000万人以上、負傷者は、その数を知らずという悲惨な結果を生んだのです。憲法20条は、9条とともに、その経験を踏まえたものです。