ロシアのウクライナ侵攻について思うこと(4)

S.レンズ著、小原敬士訳「軍産複合体制」(岩波新書、1971年)の日本語版への序文には、次のように書かれています。

「第二次世界大戦以前には、アメリカ人は日本を、その軍人階級によって支配されている軍国主義国家として非難していた。軍国主義者の目標は、アジア全域にたいして帝国主義的支配をひろげることであるということが一般に理解されていた。それは正しかったと、わたくしは思う。
今日は、アメリカ自体が、傲慢な軍産複合体によって支配されている。それは、かつて日本が知っていたものよりもずっと強力なものであり、ずっと野心的なものである。アメリカの軍国主義者は、まさに地球全体の経済的・政治的征服を目指している。かれらは、その目標を覆いかくすために、「国防」「安全保障」、共産主義を「封じこめる」必要などについて語っている。しかし、それは、帝国主義的でそして反革命的な対外政策をカムフラージュするための単なる言葉の綾にすぎない。
軍産複合体は、すべての大陸で、数億の人民の民族自決権を否定しようとしている。それは、帝国主義的イギリスをふくむあらゆる列強が過去においておこなったよりもずっと強く各国の国内問題に干渉する。ベトナムはこの種の干渉のなかのもっとも恥多いものであるが、しかし、それはアメリカの軍部、CIAおよび民間軍国主義者が、アメリカの貿易や投資を促進しようとすることが唯一のとり柄である反動的な政府に影響力をおよぼしたり、それを支持しようとするばあいに、用いるやり方の一部分なのである。
アメリカの軍産複合体は、当然のことながら、日本、イギリス、ドイツ、フランス、イタリアその他至るところに自分たちの買弁を──つまり、アメリカからの経済的・軍事的援助という形で数百億ドルをうけとり、そして自分たちの目的を、アメリカ帝国主義の目的とまぜ合わせることによってたんまりと金儲けをしたエリートたちを──もっている。かれらとその国は、人為的な繁栄を享受したが、それは大部分、アンクル・サム(アメリカ政府)の軍事機構にたいする何兆ドルという支出や、一OOO億ドル以上の対外援助費によって可能となったものであった。
しかし、このような繁栄は砂上の楼閣である。というのは、今日の軍国主義の長期の果実は核戦争でありうるだけであるからである。軍産複合体が一九四五年以後、多くの機会にべトナム、朝鮮、ラオス、キューバ等々で──核爆弾をつかうことを真剣に考えたことは、けっして偶然でない。軍産複合体は、その陸海軍やCIAを通じて、次から次へと「小型」戦争をおこない、そして次々に多くの政府を転覆させた。これらの小型戦争は、いつかは全体戦争と核の大量殺りくにひろがり、単にひ弱な繁栄ばかりでなく人類の大部分を抹殺するであろう。」

今、世界は、その危機に直面しています。アメリカは、その後、湾岸戦争の勃発を誘導し、ソ連崩壊後は、北大西洋条約機構(NATO)の再定義を行い、ロシア包囲網の構築を進めました。同時期に、日米安保の再定義も行われ、日米同盟のでっち上げも進められました。アメリカは、イラクや、ユーゴスラビア連邦や、アフガンや、リビアや、ウクライナなどで、軍産複合体に動かされて紛争を起こしてきました。

ロシアのプーチンは、NATOとの紛争を回避するために、むしろ譲歩の政策を採ってきたと言われています(ミシェル・チョドスキー著、三木敦雄訳「アメリカの謀略戦争」本の友社2003年)。それに対し、アメリカ、NATOは、少しずつロシアを追い詰める政策を推し進めてきました。

ロシアのウクライナ侵攻を客観的に見るためには、このような予備知識が必要だと思います。

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