イスラエルの残虐行為に対し国際司法裁判所が下した暫定措置命令の衝撃

パレスチナ自治区ガザにおけるイスラエルの軍事行動をジェノサイドとして南アフリカが国際司法裁判所(ICJ)に訴えた件について、1月26日、ICJはイスラエルに対してジェノサイド(民族大量虐殺)を防ぐ「あらゆる措置」を取るよう命じる暫定措置命令を出した、との報道がありました。

多くのメディアは、ICJはジェノサイドかどうかの判断は示さず、ガザでの軍事作戦停止には踏み込まなかったと報道していますが、ジェノサイドかどうかの判断を示すのは最終の判決になるはずですから、そこを強調するのは的外れです。暫定措置命令をよく読めば、命令は、即時停戦よりも厳しい内容ではないかとも考えられます。

ICJの元々の裁判官は15名ですが、そこに南アフリカの裁判官とイスラエルの裁判官が加わり、17名で審理されました。15対2、16対1という圧倒的多数の裁判官の判断によってなされた暫定措置命令の中身は次のとおりです。

By 15-2: Israel shall take all measures within its power to prevent all acts within the scope of Genocide Convention article 2
15-2: Israel must immediately ensure that its military does not commit acts within the scope of GC.2
16-1: Direct and punish all members of the public who engage in the incitement of genocide against Palestinians
16-1: Ensure provision of urgently needed basic services, humanitarian aid
15-2: Prevent the destruction of and ensure the preservation of evidence to allegation of acts of GC.2
15-2: Israel will submit report as to how they’re adhering to these orders to the ICJ within 1 month

15対2によって:イスラエルは、ジェノサイド条約第2条(GC.2)の範囲内のすべての行為を防止するために、その権限の範囲内で取り得るすべての措置を講じなければならない
15対2によって:イスラエルは直ちに、自国の軍隊がGC.2の範囲内の行為を行わないようにしなければならない。
16対1によって:パレスチナ人に対するジェノサイドの扇動に従事するすべての公衆を指導し、処罰すること。
16対1によって:緊急に必要とされる基本的サービス、人道援助の提供を確保すること。
15対2によって:GC.2の疑惑に対する証拠の破壊を防ぎ、その保全を確保する。
15対2によって:イスラエルは、これらの命令をどのように順守しているかについて、1カ月以内にICJに報告書を提出すること。

GC.2の内容は、前にコラムの「イスラエルのガザへのジェノサイドに思うこと」に書きました。原文は下記のとおりです。

In the present Convention, genocide means any of the following acts committed with intent to destroy, in whole or in part, a national, ethnical, racial or religious group, as such:
(a) Killing members of the group;
(b) Causing serious bodily or mental harm to members of the group;
(c) Deliberately inflicting on the group conditions of life calculated to bring about its physical destruction in whole or in part;
(d) Imposing measures intended to prevent births within the group;
(e) Forcibly transferring children of the group to another group.

この命令には法的効力があるけれども、強制する手段がないとされています。しかし、この命令に従わなければ、西側諸国や日本の政府が常々掲げてきた「法の支配の価値観を共有する」という看板を降ろさなければならないことになります。

「法の支配」にはいろいろな考え方がありますが、ここでは当然、下記の世界人権宣言(Universal Declaration of Human Rights)前文第3段の文脈から考えなければなりません。

Whereas it is essential, if man is not to be compelled to have recourse, as a last resort, to rebellion against tyranny and oppression, that human rights should be protected by the rule of law,

「人が専制と圧迫に対する最後の手段として反逆に訴えざるを得なくなることをなくすためには、人権が法の支配によって保護されることが肝要であることを考慮し、」(清水誠外5人訳)