裁判官弾劾裁判所だけでなく分限裁判制度も違憲(3)

特別権力関係については君塚正臣教授の「特別権力関係論・終論─堀越事件判決の再考を経て─」https://ynu.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=8670&item_no=1&attribute_id=20&file_no=1に詳しく書かれていますので、そちらを読まれれば理解が早いと思います。
国は一般国民や国内に居る人々に対して強制力を行使することが認められています。それは権力と呼ばれます。国の権力の根拠は憲法ですが、他方、憲法は、権力が人権を侵害することを防止するため、近代立憲主義の原理に基づいて権力の行使に制限を加えます。近代立憲主義から導き出されるものが、人権保障、法の支配、権力分立、法治主義です。

特別権力関係論というのは、上記の一般的な権力関係と異なる特別な権力関係が存在するという説であり、その例として、国と監獄収容者との関係や、国と官吏との公法上の勤務関係などが挙げられてきました。そして、そのような特別権力関係においては、法治主義は排除され、権利の侵害に個々の法的根拠を要せず、裁判所の審査にも服さない(出訴可能性が否定される。)、つまりその領域には憲法の人権保障は及ばないというのです。

しかし、このような特別権力関係論は、法の支配が徹底された現行憲法の下では最早根拠を失ったというのが憲法学者の通説です。それにもかかわらず、特別権力関係論の思想は現在の学説や司法に影響を与え続けています。君塚教授は、「要するに判例は「特別権力関係」という文言は用いないものの,潜在的にその思考を残しており,審査の枠組みにそれが表出していた.これに対し,通説は,これを修正する理論を提示しながら,結論が大幅に変わったわけではなかった.その意味で,両者は無意識の共犯関係にあったといえなくもなかったのである.」と批判しています。

特別権力関係論は根拠を失ったにもかかわらず、現在もなお、実質的に人権侵害に大きな影響を及ぼしています。その最も深刻な面が出訴可能性の問題です。