裁判官弾劾裁判所だけでなく懲戒制度も違憲(5)

岡口裁判官に対する懲戒申立ては2回行われました。
第1回は2018年(平成30年)7月24日、東京高裁の申立てによるもので、「申立ての理由」は次の通りです。
「被申立人は,裁判官であることを他者から認識できる状態で,ツイッターのアカウントを利用し,平成30年5月17日頃,東京高等裁判所で控訴審判決がされた犬の返還請求に関する民事訴訟についてのインターネット記事及びそのURLを引用しながら,「公園に放置されていた犬を保護し育てていたら,3か月くらい経って,もとの飼い主が名乗り出てきて,「返して下さい。」,「え?あなた?この犬を捨てたんでしょ?3か月も放置しておきながら・・」,「裁判の結果は・・」との投稿をインターネット上に公開して,上記訴訟において犬の所有権が認められた当事者(もとの飼い主)の感情を傷付けたものである。」
なぜ、このようなツイートが懲戒処分の対象になるのでしょうか。それは、裁判官が特別権力関係に服しているからであるということ以外には説明困難です。

懲戒の決定は同年10月17日に行われました。この懲戒処分も、最高裁判所が、「裁判官分限法」及び「分限事件手続規則」が定める「裁判」という名前の手続によって行いました。最高裁大法廷の「裁判」です。名前は「裁判」ですが、一般公務員が懲戒処分を争う場合のような「対審」はありません。しかも、非公開の密室「裁判」です。「懲戒の原因となる事実」は次の通りです。
「 被申立人は,平成30年5月17日頃,本件アカウントにおいて,東京高等裁判所で控訴審判決がされて確定した自己の担当外の事件である犬の返還請求等に関する民事訴訟についての報道記事を閲覧することができるウェブサイトにアクセスすることができるようにするとともに,別紙ツイート目録記載2の文言を記載した投稿(以下「本件ツイート」という。)をして,上記訴訟を提起して犬の返還請求が認められた当事者の感情を傷つけた。
本件ツイートは,本件アカウントにおける投稿が裁判官である被申立人によるものであることが不特定多数の者に知られている状況の下で行われたものであった。」

別紙のツイート目録は次の通りです。
「1 判事任命の官記の写真1枚と共に,「俺が再任されたことを,内閣の人が,習字で書いてくれたよ。これを励みにして,これからも,エロエロツイートとか頑張
るね。自分の裸写真とか,白ブリーフ一丁写真とかも,どんどんアップします
ね。」などと記載したツイート
2 公園に放置されていた犬を保護し育てていたら,3か月くらい経って,
もとの飼い主が名乗り出てきて,「返して下さい」
え?あなた?この犬を捨てたんでしょ? 3か月も放置しておきながら・・
裁判の結果は・・」

何か付け足されています。それだけでなく、「本件に至る経緯」として、いっぱい付け足しがあり、何が懲戒処分の原因なのか分からなくなっています。
このようなことが起こるのは、懲戒処分権者が職権で懲戒を行っている実体があるからです。これでは、名前は「裁判」でも中身は裁判ではありません。

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