裁判官弾劾裁判所だけでなく分限裁判制度も違憲(6)

6 岡口裁判官に対する懲戒処分その2
岡口裁判官に対する2回目の懲戒処分は2020年1月27日、仙台高裁が申し立てました。仙台高裁の「申立ての理由」は不明です。
秋吉淳一郎仙台高等裁判所長官が申立て当日にマスコミを通じて公表したところによると、
「岡口判事は2019年11月12日、自身のFBのアカウントで、東京都江戸川区で高校3年の女子生徒が殺害された事件に言及。遺族が同判事を国会の裁判官訴追委員会に訴追請求したことを取り上げ、「遺族は俺を非難するよう洗脳された」などと投稿した。
この日は女子生徒の命日で、遺族は同月、同高裁に抗議。岡口判事はこの事件について、東京高裁に所属していた17年12月にもツイッターに「無惨(むざん)にも殺されてしまった」などと投稿、厳重注意を受けており、遺族を侮辱し、裁判官に対する国民の信頼を損ねたと判断した。」
ということです。

他方、岡口裁判官に懲戒申立書が送達されたのはその翌日で、同裁判官は自分に対する懲戒申立てをマスコミによって知ったということです。しかも、その申立書は機密指定されており、岡口裁判官も公表できないという奇妙なものです。「申立の理由」が不明であるのも、そのためです。岡口裁判官の個人情報は考慮する必要はないが、遺族の個人情報は秘匿しなければならないという判断でしょうか。

最高裁は、同年8月26日、岡口裁判官を戒告する旨の決定をしました。「懲戒の原因となる事実」は次のとおりですが、これが懲戒申立書の申立の理由と同じかどうかは不明です。
「被申立人は,令和元年11月12日,フェイスブック(インターネットを利用して投稿による情報発信やメッセージ交換等を行うことができる情報ネットワーク)上の被申立人の実名が付された自己のアカウントにおいて,自らが裁判官であることが知られている状況の下で,多数のフェイスブックの会員に向けて,本件遺族が被申立人について裁判官訴追委員会に対する訴追請求をしていることなどに言及する投稿(以下「本件投稿」という。)をした際,別紙投稿目録記載2のとおり,本件遺族が被申立人を非難するよう東京高裁事務局及び毎日新聞(以下,これらを併せて「東京高裁事務局等」という。)に洗脳されている旨の表現を用いて本件遺族を侮辱した。」
別紙投稿目録は次のとおりです。
「1 首を絞められて苦しむ女性の姿に性的興奮を覚える性癖を持った男
そんな男に,無惨にも殺されてしまった17歳の女性
2 裁判所が判決書をネットにアップする選別基準
(中略)
東京高裁は,このうち,「イ 刑事訴訟事件(イ) 性犯罪」に該当する判決書をアップしてしまったのですが,その遺族の方々は,東京高裁を非難するのではなく,そのアップのリンクを貼った俺を非難するようにと,東京高裁事務局及び毎日新聞に洗脳されてしまい,いまだに,それを続けられています。
東京高裁を非難することは一切せず,「リンクを貼って拡散したこと」を理由として,裁判官訴追委員会に俺の訴追の申立てをされたりしているというわけです。」

この決定にも「本件に至る経緯」として、本件と直接関係がない事実が書かれています。

前に述べたとおり、分限「裁判」のやり方は、分限事件手続規則に任されており、分限事件手続規則に定めがない事項については、その性質に反しない限り、非訟事件のやり方に従うことになっています。つまり、訴訟手続には従わないということです。しかも、高裁判事の場合、不服申立ては一切認められません(裁判官分限法3条2項)。