裁判官弾劾裁判所だけでなく分限裁判制度も違憲(2)

高裁の裁判官の分限事件よりも問題が少ない地裁、家裁、簡裁の裁判官の分限事件の方から見ていきたいと思います。こちらは高裁が「裁判」を行い、その判断に不服がある場合、最高裁に抗告という不服申立てができることになっています(分限法第3条、第8条)。

その「裁判」のやり方は、最高裁判所の分限事件手続規則に任されており、分限事件手続規則に定めがない事項については、その性質に反しない限り、非訟事件のやり方に従うことになっています(分限事件手続規則第7条)。従って、手続は公開されず、審理は職権主義で行われます(非訟事件手続法第30条、第49条)。

その実質は、懲戒の裁判をする前に「当該裁判官の陳述を聴かなければならない。」というだけで、懲戒処分権者が「裁判」と称して職権で処分を下すものになっています。一般の公務員が懲戒処分を受けた場合、その公務員は、裁判所に処分取消等の訴訟を起こすことができますが、裁判官が懲戒処分を受けた場合には、2週間以内に抗告しなければ確定してしまいます(分限事件手続規則第6条)。
一般の公務員より裁判官の方が保護が薄いと感じられないでしょうか。2週間という期間は短いけれど、最高裁が判断してくれるのだから、問題ないと思う人も多いかもしれません。しかし、一般の公務員の場合、処分取消等の訴訟は対審(当事者が対立する形の裁判)の形になりますが、分限事件の裁判は、抗告しても対審になりません。ここには大きな違いがあります。

岡口裁判官の分限事件では、表現の自由が争われました。この場合、憲法82条1項に、「裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。裁判所が、裁判官の全員一致で、公の秩序又は善良の風俗を害する虞があると決した場合には、対審は、公開しないでこれを行ふことができる。但し、政治犯罪、出版に関する犯罪又はこの憲法第三章で保障する国民の権利が問題となつてゐる事件の対審は、常にこれを公開しなければならない。」とありますので、非公開で裁判することはできず、口頭弁論手続が必要です。しかし、裁判官が懲戒処分を争う場合には、一貫して密室裁判になります。この面からも、裁判官の方が保護が薄いといわなければならないのです。

それではなぜ、裁判官の独立のために手厚い身分保障が必要とされる裁判官の方が保護が薄いのでしょうか。私には、それを正当とする根拠は見つけられません。ただ、なぜそのような制度になっているのかという理由は見当が付きます。それは特別権力関係論の考え方です。特別権力関係の思想は、一般の公務員にも根強く残っていますが、裁判官の場合には、それが特に顕著です。