裁判官弾劾裁判所だけでなく分限裁判制度も違憲(1)

岡口裁判官は、東京高裁判事であった2018年10月17日、ツイッターに不適切な投稿をしたという理由で戒告処分を受けました。又、仙台高裁判事に異動後の2020年8月26日、フェイスブックに不適切な投稿をしたという理由で、2回目の戒告処分を受けました。

この分限裁判制度も違憲であるというのが私の結論です。ただ、憲法には裁判官の懲戒処分について、「裁判官の懲戒処分は、行政機関がこれを行ふことはできない。」という定めがあるだけで(憲法78条)、裁判官分限法では、裁判所が懲戒処分を行うことになっています。それでは何が違憲なのでしょうか。

そこで、先ず裁判官分限法の関係条文を引用しておきます。

(懲戒)
第2条 裁判官の懲戒は、戒告又は1万円以下の過料とする。

(裁判権)
第3条 各高等裁判所は、その管轄区域内の地方裁判所、家庭裁判所及び簡易裁判所の裁判官に係る第1条第1項の裁判及び前条の懲戒に関する事件(以下分限事件という。)について裁判権を有する。
② 最高裁判所は、左の事件について裁判権を有する。
一 第一審且つ終審として、最高裁判所及び各高等裁判所の裁判官に係る分限事件
二 終審として、高等裁判所が前項の裁判権に基いてした裁判に対する抗告事件

(合議体)
第4条 分限事件は、高等裁判所においては、5人の裁判官の合議体で、最高裁判所においては、大法廷で、これを取り扱う。

(管轄)
第5条 分限事件の管轄裁判所は、第6条の申立の時を標準としてこれを定める。

(事件の開始)
第6条 分限事件の裁判手続は、裁判所法第80条の規定により当該裁判官に対して監督権を行う裁判所の申立により、これを開始する。

(裁判)
第7条 第1条第1項の裁判又は第2条の懲戒の裁判をするには、その原因たる事実及び証拠によりこれを認めた理由を示さなければならない。
② 裁判所は、前項の裁判をする前に当該裁判官の陳述を聴かなければならない。

(抗告)
第8条 高等裁判所が分限事件についてした裁判に対しては、最高裁判所の定めるところにより抗告をすることができる。
② 抗告裁判所の裁判については、前条の規定を準用する。

(手続の中止)
第10条 分限事件の裁判手続は、当該裁判官について刑事又は弾劾の裁判事件が係属する間は、これを中止することができる。

(裁判手続)
第11条 分限事件の裁判手続は、この法律に特別の定のあるものを除いて、最高裁判所の定めるところによる。

以上

懲戒に関する事件は「分限事件」の一つとされていますので、以下、懲戒処分事件といわずに、分限事件といいます。高裁の裁判官に係る分限事件の「裁判手続」は、裁判官分限法6条に基づき、高裁が最高裁に分限事件の裁判を申し立てることにより開始されます。

懲戒処分というのは、本来、裁判ではありません。それは、民間企業の従業員に対する懲戒や一般の公務員に対する懲戒処分を想起すれば分かるはずです。

裁判所が行えば何でも裁判だということではありません。しかし、裁判所法49条は、裁判官の懲戒は「裁判手続」によって行うというのです。そして、分限法第3条によれば、最高裁は、「第一審且つ終審として、最高裁判所及び各高等裁判所の裁判官に係る分限事件」について、裁判権を有するとされています。分限事件を「裁判」とし、かつ、「終審として」行うということは、その結論に対して一切不服申立は許さないということです。そこに、憲法上、重大な問題が隠されています。