破産についての基本的な考え方(5)

サラ金地獄

私が大阪で弁護士登録をして、まもなく、小口信用貸業者(サラ金)による苛酷な取り立てが「サラ金地獄」と呼ばれるような社会問題になりました。借金のために、住む所を失ったり、家族関係が崩壊したり、自殺したりする事例が急増しました。

従来は、小口の貸金は質屋が行っていました。質屋の場合、利息は高いけれども、質屋に担保として預けた物(質草)を放棄すれば(質流れ)、質草はなくなるけれども借金もなくなるので、取り立てに苦しめられるということはなかったのです。

サラ金の場合は、質草というものがないので、貸金業者は、返済しない債務者から取り立てによって回収するのです。サラ金業者が相手にするのは、見るべき財産もなく信用もない人々が大半で、訴訟や差押えなどの法的手段が役に立たないということで、とにかく、暴言でも脅迫でも、時には暴力でも、あらゆる手段を使って回収しようとしました。

そのため苦境に陥った債務者からの相談も深刻な事例が多く、弁護士がサラ金業者との交渉の委任を受けて、業者と電話で話しても、なかなか話になりませんでした。たとえば、利息制限法の利率で計算したらこうなると言っても、「ワシらは利息制限法で商売しとるんやないど! お前らそれでも弁護士か!」と怒鳴ったり、債務者本人や家族への取り立てを止めないということがザラでした。

サラ金問題研究会

そんな時、木村達也弁護士の呼びかけで、まだ駆け出しの弁護士が集まって、サラ金問題研究会を作り、任意整理のやり方や取り立て差止めの仮処分など、いろんな対処法についての考えを出し合いました。その成果は、個々の弁護士の仕事に生かせただけでなく、「サラ金110番」という小冊子にもなりました。また、関西大学の上田昭三教授も協力して下さって、小口金融のありかたについて、国や社会への提言を発表することもできました。

そのサラ金問題研究会で、メンバーの一人が、先輩の井上善雄弁護士が手がけたという自己破産の事例を紹介してくれました。それは、自己破産申立ての予納金が5万円で、申立てが認められたというものでした。その頃、自己破産には最低50万円の予納金が必要だというのが弁護士の常識のようなものでしたから、「え? そんな予納金で破産できるの?」と驚きました。日本で、破産法が債務者救済法として実際に機能し始める瞬間でした。