破産とは ― 破産がわかる(8)

会社の破産の要否
会社経営が行き詰まって、会社が多額の債務を抱え、会社の代表者がその債務の連帯保証人になっている場合、会社の代表者が自己破産を申し立てるという事例は珍しくありません。

その場合、会社も自己破産申立てか、民事再生申立てのような法的な手続をしなければならないかと言えば、それはケースバイケースです。会社に資産がない場合、自己破産を申し立てるメリットはありません。個人と違って、免責を受ける必要がないからです。債権者の方も、会社に資産がないことが大体分かっているため、会社の財産の取り合いで混乱する恐れもほとんどありません。そのため、当事務所では、代表者個人の自己破産を申し立てる場合に、会社が無資産であれば、会社は事実上倒産というだけで、法的な手続きはしません。

もっとも、債権者は、それで収まるわけではありませんので、当事務所で代表者の自己破産の委任を受ける場合は、会社について任意整理の委任を受けます。そうすれば、代表者は、倒産に関する一切の事務について、債権者と直接交渉をする必要がなくなります。その上で、弁護士は債権調査、財産調査を行い、会社に財産がなければ、各債権者に最終貸借対照表および配当不能の旨を記載した最終通知書を送付して任意整理を終了します。

会社の破産申立てとなると、弁護士費用が少なくとも50万円程度、裁判所への予納金が50万円程度かかります。事情により増減はありますが、会社の破産の必要がない場合、代表者の破産と会社の任意整理を抱き合わせることで、弁護士費用が大幅に軽減されます。

会社の破産申し立て
会社に財産(不動産や商品や売掛金債権など)がある場合には、会社の混乱を防止するために、会社の自己破産を申し立てるべきです。その場合には、債権者に状況を察知される前に、混乱を避けるための方策を練っておく必要があります。

債権回収のためには手段を選ばないような債権者がいると予測される場合には、代表者の身辺の安全を考えなくてはならないこともあります。突然どこかに連れて行かれて、訳の分からない書面に署名させられたりすると、厄介なことになる可能性があります。それは、個人の破産でも、多額の資産を持っていて破産する場合には起こり得ることです。ただ、個人の場合は、そんなケースは滅多にありませんが。

そのため、自己破産申立ての直前まで、債権者にその情報が漏れないよう注意するのが普通です。自己破産申立てと同時に、会社は戸締りを厳重にして、一部の債権者が勝手に会社財産を持ち出さないようにし、弁護士名で警告の張り紙をします。

また、自己破産申立てと同時に、保全の申立てをする場合もあります。債権者平等の原則のために、破産法は、破産手続開始決定に先立つ保全措置の規定を置いています。そこで、債務者会社の財産に対する保全処分申立てや、すでに行われている強制執行などの中止命令申立てなどを考えます。

破産手続開始決定と同時に破産管財人が選任され、会社財産の管理・処分権は破産管財人に移ります。

破産管財人には、債務者が破産手続開始申立て前にした財産の処分なども否認して取り返す権限が与えられています。それによって、破産制度の本来の目的である、会社財産をより公平に債権者に配当することができます。

民事再生の可能性の検討
破産手続は事業の閉鎖のための手続ですが、債務を軽減してもらって、事業の継続を図る手続が民事再生法の定める民事再生です。

事業継続には、任意整理という方法もありますが、民事再生は、法の助けを借りて、債務を軽減してもらう利点があります。民事再生法は、個人の民事再生(個人再生)も定めていますが、個人再生は事業の継続ではなく、債務の軽減が主たる目的です。それに対し、会社の民事再生は、事業の継続が主たる目的で、債務の軽減は、事業継続のための手段です。

民事再生にも会社継続型の再生と会社清算型の再生がありますが、会社清算型でも、事業は受け皿会社に引き継がれて継続するのが原則です。そのため、民事再生では、申立て後も原則として事業を行います。破産の場合、申立て後は事業を停止しますが、その点が民事再生と大きく異なります。

破産についての基本的な考え方(1)
同(2)
同(3)
同(4)
同(5)
同(6)
同(7)