破産とは ― 破産がわかる(6)

自己破産が多重債務者救済の表舞台に

破産が債務者の救済に役立つということは、それまで、ほとんどの弁護士の頭の中にはありませんでした。なぜなら、破産には高額の予納金を裁判所に納めなければならず、そんなお金は債務者には到底準備できないからです。

しかし、あらためて破産法(2004年全面改正前の破産法)を読んでみると、自己破産を申し立てた債務者に予納金を納めさせるという実務には法的根拠がないことが判りました。自己破産の場合、破産手続費用は、国庫から仮支弁(仮払い)されるので、債務者は、その費用を負担する必要がないと定められていました。

つまり、債務者に予納金を出しなさいと言う裁判所は法律違反をしていたのです。その点について、大阪高裁は、1984年、「破産法140条は、控訴人の主張するとおり、債務者が破産申立人である場合には、必要的に、その手続費用は国庫において仮支弁することを定めたものであるが、そのことは、費用を予納できる申立人に対し、任意にこれを予納するように求めることまでも禁止する趣旨のものではない。」という理由で、裁判所のやり方は法律違反ではないと断定しました。しかし、「任意に予納するように求める」と言っても、予納金を納付しなければ、裁判所は手続を進めてくれませんから、事実上強制なのです。

ただ、大阪地裁では道下徹裁判官が、意向聴取書を債権者に送付する方法で、破産管財人を選任しない方式を採用し、予納金の額は一律5万円程度に抑えられることになりました。それによって、十数年眠り続けていた破産免責制度が目を覚ましたのです。

サラ金問題研究会では、「サラ金110番」に続いて「消費者破産の手引き」を出版し、債務者救済のための自己破産申立が全国に広がっていきました。

支払困難に陥った債務者を救済する必要性と相当性

その頃の大方の裁判官の意識としては、麻上正信裁判官の「破産事件の最近の傾向と実態」(「破産法」金融商事判例別冊5頁)に、「サラ金破産の場合多くは弁護士会の無料法律相談で知識を仕入れてくるらしく、サラ金破産の場合免責が当黙という前提でくるので、裁判所もいきおい、その不心得を諭し、借りた金を返えすのは当然で法律的に過払利息を繰り入れた残りを分割弁済できるように調停申立を示唆する場合もある」と書かれているようなものでした。

しかし、「サラ金地獄」と言われる状況に陥った債務者に、借りた金を返すのは当然だと言ってもはじまりません。まじめな債務者ほど、それこそ借りた金を返そうと必死になって更に高利の借金を重ね、その結果、利息に利息が付くのと同じで、雪だるま式に借金がふくれ上がるのです。

支払困難に陥った債務者は、経済的な面では落伍者ですが、経済的な面は社会の一面に過ぎません。誰もかれも金儲けをするために生まれてきたのではないのですから、破産したからといって人間失格のらく印を押すことはできない筈です。まして、国の最高法規である憲法には、「国民は、すベての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。」(11条)、「すベて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」(25条)項)と定められ、この憲法制定後は、個人の地泣が大きく変わりました。破産者といえども基本的人権を侵すことはできないのです。

窮地に陥った債務者を放置するのではなく、救済の手を差しのべて更生させることは、社会全体にもプラスになります。この面からも、債務者の救済は、国の責務であると考えられます。

長年の新自由主義政策によって、貧富の格差がどんどん大きくなっていますが、破産制度も、一つのセーフティネットと理解することができます。

破産は、債権者にとっても、だらだらと無資力の債務者に対する無駄な請求を続けなければならないという状態に区切りを付けられるというメリットがあります。

破産についての基本的な考え方(1)
同(2)
同(3)
同(4)
同(5)
同(7)
同(8)