司法修習生の「給費制」問題の議論で抜け落ちているもの(3)

4 司法修習制度のモデル

「判・検事となるべき者と弁護士となるべき者とを区別することなく、統一して国家が養成する」という法曹養成制度のモデルは、それまでにあった司法官試補の制度だとも言えますが、元々の司法官試補制度のモデルとされたドイツのレフェレンダールの制度では、弁護士事務所や行政庁での実務修習も課され、修習期間は三年半以上四年以下とされていましたから、むしろこちらの方に近いと思われます(早野貴文・前掲二九頁)。
日本ではレフェレンダールの制度をお手軽にした格好で、司法科試験に合格後、司法官試補に採用されて有給の一年半の実務修習を終え、二回試験と呼ばれる試験に合格すると、判事、検事になる資格が与えられていました。また、昭和八年の弁護士法改正で弁護士試補の制度が新設され、司法科試験に合格後、弁護士試補として、無給の一年半の実務修習を終えて試験に合格することにより弁護士資格が与えられることになっていました。
司法修習制度は、要するに、それまでの弁護士試補制度を有給の司法官試補制度に吸収し、実務修習の期間を一年六カ月から二年に延長したと見られます。もともと,司法官試補の修習を終えて二回試験に合格すれば、判事、検事だけでなく弁護士にもなれましたから、司法官試補の定員を増やした上、弁護修習も行うようにした制度とも言えます。
敗戦から間もないどん底の経済状態の中で、弁護士の養成も判事、検事と一緒に国が給与を出して行うというのは予算の大幅な増額になり、「少なくとも二年」としても、当時の予算の中では大きな負担だったはずですが、司法官僚制を残すためにはやむを得ないと判断されたのだと思われます。統一修習は、実質的に司法官試補の定員を増やしたと考えれば、国が給与を出すことに法的な障害はないはずです。実際、司法修習制度では、修習生が裁判官になるか、検察官になるか、弁護士になるかは司法修習を終えるまでは未決定とされています。
司法修習生が有給であるということは、従来司法官試補が官吏服務規律に服したと同様に、司法修習生も国家公務員またはそれに準ずるということで、国家公務員法一〇一条一項の職務専念義務が修習生に準用されることにもなり(修習生の場合には修習専念義務)、比較的短期間で修習の実を上げることも期待されたはずです。それでも、二年というのは前記司法制度改正審議会の小委員会に司法省が提出した三年案より後退していることは否めませんが。

(つづく)